保険医協会の研修会。清水区開業の先生の院内感染対策についてのご講演。
我々医療従事者はその職業がら、感染の防止に取り組むのは当然である。
感染の経路としては 患者→術者、術者→患者、患者→(術者)→患者が主に考えられ、そのどれも起こしてはならない。とくに3番目の有病者の患者さんから術者を介してその病原体を他の患者さんに感染させるなどはもってのほかである。
でもね………
学者や消費者団体やマスコミ、医療器具メーカー、健康器具メーカー、ナントカ還元水のようなもっともらしい「水商売」の輩が大騒ぎする。消費者はそれを鵜呑みにし、除菌スプレーだの超ナントカ水だのがバカ売れし、医療関係者がちょっとなにかミスをしようものなら徹底的にたたかれる。清潔好きな日本人には,細菌=不潔、したがって徹底的に駆逐するのが正義 という安直な数式が神聖化される。
病院などで時々騒がれるMRSAの発生、じつは除菌とかに誠実に取り組んでいる医療機関での発生の方が多いんです。矛盾しませんか?
滅菌、殺菌などの操作をおろそかにしていいというわけではないですよ。そういった操作を誠実に行いながら、感染が起きないように。そのうえで「過剰な感染対策」にはあまり意味がない事も知らないといけない。
またこの辺もいずれコラムでくわしく書きたいと思います。
歯科診療でも、「患者さんごとに毎回毎回滅菌手袋を交換して使用せよ」などと言うやからがいる。???である。そのレベルを求めるんだったら、最低限診療室には大病院並みの排気・無菌吸気システムがあり、診療室に入るにはエアーカーテンがなけりゃいけない。そこらの歯医者でそこまでの設備投資ができるお金持ちはあまりいない。それらのシステムを理解し、間違いなく運営できるスタッフを育成し、運営していく余力のある歯医者もそうそういない。今日講演なさった天野先生の診療所にはそれがあるらしい。それはそれでスゴイ。そして、独自に感染予防のシステムを確立し、そのマニュアルにしたがってスタッフが動いているのもスゴイ。そういったこだわりは嫌いじゃないし、尊敬に値する。
でもね………
外来診療である限りはエアーカーテン通ろうが、患者さんの衣服には戸外の雑菌がワンサカ存在するし、皮膚や口腔内にも常在菌は莫大な量が存在しているよね。術者の術衣だってその都度換えなきゃ意味ないし、スタッフも然り。そこまでやってますか? ン?
結局、外来で診療している限り、限界があります。そして、感染のメカニズム、本来生体のもっている感染防御のメカニズムを理解した上での予防対策が必要になってきます。闇雲に「薬液消毒せよ」「器具はすべて滅菌せよ」「滅菌できないものはすべてディスポーザブルにせよ」ってのもどうかと思うよ。
くれぐれも誤解してほしくないのだが、僕は感染予防対策の重要性は理解しているし、それに努めている。しかし、過剰な対策はする必要もないし、してはいけないと思うだけだ。
結果、あまり参考にならない研修会でした。
2007年8月25日土曜日
感染予防の実際